木下 恵介  Places – 並置と重なり
Places–20.02/ リトグラフ/700×900mm/2020年 © Keisuke KINOSHITA

木下 恵介  Places – 並置と重なり

木下恵介は近年、自宅近くの多摩川周辺風景を捉えてきました。遠くから眺めるとき、また散歩をするときに目に入るいつもの風景。しかしそこにある自然は、長い時間をかけてたくましくサイクルを繰り返しながら存在しています。
これまで様々な技法や描き方で制作した作品をコラージュ等をして表現してきた木下ですが、今回も遠景の視点や身近な視点で描き出した自然を1つの画面に現しています。表情豊かな線と余白、そしてその蒐集されたさまをお楽しみください。
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ありふれたこの美しい世界に  (愛媛県美術館 専門学芸員 杉山はるか)

 すっきりとして緩やかな曲線を描く山の稜線、葉を落とした木々が見せる細やかな枝のシルエット―私たちの日常の中にある、ありふれていながら愛おしい大切な風景。
 足元に目を向けると、力強く根を下ろした小さな植物が一面に広がりひとつの世界を形成している。手を伸ばして触れてみる。ひんやりとした、柔らかい、滑らかな、ざらざらとして、ちくちくした・・・指先から伝わるあらゆる感覚が、静かに目を閉じると次第に研ぎ澄まされてゆく。姿かたちの異なる様々な生き物がこの世界に息づいている。
 そして再び視線をいつもより少し上げると、どこまでも果てしなく続く空。

 木下恵介の手からは無数の均一な、そしてまた柔らかい線が繰り出され、見事に調和した世界を表出する。
 毎日見ることのできる風景だからこそ、改めて作品として目の前に立ち現れたときに、不思議な、そしてどこか新鮮な感覚が呼び起こされるのである。私たちはひとつ所に留まることない時の流れの中で日々を過ごしている。そのような暮らしの中で、ふと立ち止まることの大切さに気付かされる。

 木下が生み出す線は、これまでも身近な植物や自然、そして身の回りのものなど、具体的なかたちを持つものから、繊細なものや大胆で力強いものなど様々な表情をたたえた線そのものまで、色彩や形状も変化させながら描かれてきた。前回の個展では、昭和初期頃までの美しい書籍の装幀を思わせる、ひとつひとつ丁寧に図案化された作品が小箱に収まっており、その中で、複数の異なる作品の刷り跡が、下に敷いた紙に線となって無作為に積み重なり、そこから斬新な色調が表れていた。
 線にはいつでも新しい出会いがあり、またささやかな感動が生まれる。

 木下が追究するリトグラフと銅版画による世界が、今この時代、私たちの内面に何を灯すのだろう。

期間
2020年 5月7日(木) – 6月1日(月) 13:00-19:00 (最終日は-17:00)
※期間中の水曜・日曜・祝日は休廊いたします。
※会期や開廊時間変更の可能性がございます、最新情報はfacebookでご確認ください。
場所
GALLERY TAGA2
オープニングパーティー
感染症拡大防止のため開催致しません
お問い合わせ
info@gallerytaga2.com  田賀