10/30 – 11/25 清水 美三子 情緒の所在

10/30 – 11/25 清水 美三子 情緒の所在

 清水さんは「都市生活者が関わっている自然」に興味を持ち続けてきたという。確かに、都市という人工的な空間でも、自然は変わりなく野生の匂いを放ちながら存在している。ただ、その存在に敏感で居続ける人は少ないのかもしれない。都市という空間で自然の気配に反応しながら、長い間、清水さんは自身の心象をイメージに結ぼうとしてきた。
 今に続く仕事がはじまったころ、画面は直線によって仕切られ、墨の濃淡や矩形を構成することによって空間が作られていた。それらは都市の生活を思わせもしたが、その直線は内と外、あるいは光と影といった相対する世界を示す境界のようでもあった。大地から切り離された植物が命の断片となって浮遊する画面には赤い色が点在し、墨の色と合わせて生と死を暗示していたようにも思う。この時期、清水さんは自然を狩りながら、花を生けるように都市の風景を描いていたのではなかったか。
 その後、色彩も豊かになり造形的な高まりを迎えるが、2005年ころだろうか、画面に幾重にも“弧”が描かれはじめる。「無意識から出たかたち」と清水さんはいうが、掻き疵のような硬質な線で描かれた“弧”の重なりは、やがて螺旋となって画面を支配し、全てを撹拌し再生を促しはじめた。
 近年の清水さんの作品を満たしているのは“水”である。画面はモノクロームとなり、特に淡い青の世界でおおわれた作品が美しい。いや、何よりも心地よく生命力にあふれている。水は揺れながら気化し、湿潤な大気の中を循環している。私には、長い間、清水さん自身が予感し続けたイメージが、その身体的行為を伴ってようやくかたちを持ちはじめたように感じられる。
 「版から生まれてくるものを、私のかたちを、見失うまいと幾度も線を重ねる。やがてその絶対的一瞬は訪れる。無限のはたらきをひき連れて。そうして私は静かに納得して興奮する。」とは、14年前の清水さん自身の言葉である。まさに自然が、清水美三子という版画家を通して自在なかたちを現しはじめた。 

( 岸野裕人 姫路市立美術館長 )

期間
2014年 10月30日(木) – 11月2日(火) 12:00-19:00 (最終日は-17:00) 終了しました
場所
GALLERY TAGA2