吉田 萠  メモリー/変態   2/28–3/26
Dyed hair same color as wall (染めた髪、壁と同じ色)/紙に鉛筆、パステル、チャコール /420×297mm/2018年/© Moe Yoshida Veggetti

吉田 萠  メモリー/変態   2/28–3/26

吉田萠は1998年にイタリアに渡って以来、記憶やアイデンティティーの構造、その視覚化を主題にボローニャとニューヨークを拠点に制作活動しています。また、イタリア人演出家ルカ・ヴェジェッティと舞台芸術の分野で積極的にコラボレーションするなかで、近年では “物語る方法” に焦点をあて、立体、ドローイング、ビデオ、パフォーマンス、といった様々なジャンルをとおしてこの主題に取り組んでいます。GALLERY TAGA 2で2回目となる個展「メモリー/変態」では、主観的な時間感覚をテーマに制作した立体と平面作品の展示を行います。

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世界中の鼻、吉田萠の方法  (Gabriele Tosi、キュレーター )

        
 今世紀の芸術が検討すべき、表現様式に関わる大きな問題のひとつに、美術の歴史がここまで進んできたが故の芸術作品の力の減退があげられるように思う。これまでの絵画や彫刻、ドローイングの権威は、それぞれの特徴に基づいて定められた展覧会や保存収集法、教育等の制度体系により、今なお最大の保護を受け継承され続けているが、今日の芸術家はそれらのコンテクスト、方法、物理的条件や空間的制限の垣根を超えて、より広範囲で先験的に含まれない新しい観衆に、表現によってアプローチせんとあらゆる手がかりを探ろうとする。こういった現代美術に支配的なイデオロギーに内在する逆説は、芸術作品の内部の強さの喪失を数ある帰結の一つとしてもたらしたように思う。今日の芸術は、内部が衰え、外部の情報を自らの中に吸収するという能力に活路を見出している。
 これは、吉田が過去十年間活動をしてきたイタリア現代美術の主な傾向である。この状況で吉田が選択した道は、そういった今日的な表現の傾向から離れて独自であり、故により興味深いものである。
 吉田は芸術の強さ、細胞が核に搭載された情報を膜で覆い内在させているような、ひとつの内生の力を備えた作品の在り方を、創造的関心を臨床的に軽くずらす事によって救ったのではないか。多くの者の興味関心が、知性や情報、人工やインターコネクトと、ともかくメンタルや脳の領域に集中しているなか、吉田は体のあらゆる部分に価値を見出したのだ。そう、鼻やお腹、脊椎、口、毛髪などに。
 吉田にとって絵画は遺伝学、サイボーグ、そしてDNAに関わる彼女独自の研究のためのフィールドであり、個々の器官や臓器、身体の断片は、それ自体に固有の記憶を内在させている存在なのだ。ここで言う記憶とは、独立したひとつの個に関する物語ではなく、この世界のすべてのお腹や背骨を結びつける、水平に広がるネットワークの創造に関するものである。そこには人間はもちろん、動物、植物、そしてデジタル的存在も含まれている。
 このように述べると、我々は完全なる抽象の世界に放り込まれたように感じるが、吉田作品の視覚的アクションは、実際はこれに反抗的に働いている。彼女のコラージュから引き延ばされた描線が、複数の次元間を放浪する何かを追いかけようとする様に、吉田の作品はまず何よりも、掴もうとしても逃げてゆく我々のアイデンティティーを形成する目に見えない断片の、時間的、空間的測定を試みるものなのだ。我々は彼女の絵画や彫刻作品との親密なコミュニケーションに反応し、目鼻の輪郭、臓器の健やかさ、思い出の中の草原の色を脳裏で捉える。また、独特の方法で用いられる文字は、乳白色のビッグバンの中に音とイメージを同じ招魂的なレベルにおきながら、視覚と聴覚の間に設置される。この力に満ちたマテリアルの中には物語と記憶からできたオーラがあり、個々の人間の器官に内在する様な、そのような力がこもっている。

Gabriele Tosi (ガブリエーレ・トージ):キュレーター、非営利アートスペースLocaledue(ボローニャ、イタリア)運営。

期間
2019年 2月28日(木) – 3月26日(火) 12:00-19:00 (最終日は-17:00)
※期間中の水曜・日曜・祝日は休廊いたします。
場所
GALLERY TAGA2
オープニングパーティー
2月28日(木)18:30-20:30
ギャラリートーク<吉田萠氏 x 野田尚稔氏>
3月9日(土)16:30〜18:00 吉田萠氏が野田尚稔氏(世田谷美術館学芸員)と対談を行います。
お問い合わせ
info@gallerytaga2.com  田賀